昨年12月21日、政府は平成28年度予算編成の過程で焦点となっていた診療報酬改定について、全体で0.84%引き下げることを決めました。

診療報酬本体は0.49%のプラス改定ですが、これに薬価、材料価格のマイナス1.33%を合わせると、実質は前回改定に続き2回連続でのマイナス改定という大変厳しい結果となりました。

背景には、政府が進める経済再生と財政健全化の一体化計画があり、歳出面においては、厳しい財政状況の中、特に社会保障費の伸びを抑制することが避けられず、そのために診療報酬の適正化、効率化が早くから改革議論の遡上に挙げられていました。従って、今回の改定が厳しい改定になることは当然ながら予測されていたものと言えます。

この政府による改定率の決定を受けて、本年1月13日から中医協の場で、個別の診療報酬項目に係る具体的審議が始まり、診療側、支払い側双方による大変激しい議論の末、2月10日、平成28年度診療報酬の改定案が、厚生労働大臣あてに答申されました。答申された改定案を見てみますと、高齢化が進むなか、ピークを迎える2025年のあるべき我が国の医療の姿、地域医療構想が掲げる医療提供体制の実現に向けた意図が強く感じ取れます。

できるだけ住み慣れた地域や自宅で医療や介護を受けられる「地域包括ケアシステム」を構築すること、身近なところで日常的に診ることのできる「かかりつけ医」の一層の充実・強化や、今回、新たに服薬管理だけでなく健康支援や相談対応を行う「かかりつけ薬局」なども創設され、質の高い在宅医療を推進しようとしています。

また、医療機能の分化・強化・連携などが引き続き重点課題として掲げられています。留意すべきは、これまで単に人員配置や施設要件などが評価の対象となっていたものが、ここ最近の傾向として、アウトカムやイノベーションを重視した評価が加えられるようになってきていることです。患者の病態においては、量症度・医療・看護必要度が前回以上に大きく影響を及ぼすことになりそうです。

各医療機関におかれましては、2025年、さらにその後も含めた国の医療政策をしっかりと読み取り、地域の医療ニーズと自らが持ち合わせている医療機能を十分踏まえた上で、目指すべき医療の方向性やポジショニングを判断していく必要があります。